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事例で見る介護

介護 ~前触れもなくやってくる介護生活~

鈴木一郎(51歳)は、妻と子ども(大学生・高校生)の4人暮らし。
東京郊外の公団住宅に住み、家電メーカーの営業担当として忙しい日々をおくっている。
一郎は東京の大学を出て、そのまま東京の会社に就職したので、故郷の山口県を離れて、30年ほどが経っている。

良子
「最近、腰痛と右手足がちょっと痺れる※1ときがあるけど、年だからね」

電話口で母親の良子(78歳)は、軽い愚痴を言うが、故郷で気丈に一人暮らしを続けている。
ご近所にも良子のような身の上の方は多いようだ。

  • ※1.片側の手足のしびれ感がある場合などは、一過性脳虚血発作(TIA)の可能性が疑われる場合があります。
    TIAとは、脳への血液の流れが一時的に遮断されるために起こる一過性の脳機能障害のことです。
    症状は、片側の手足の麻痺やしびれ感、ろれつが回らなくなったり、片方の目が見えにくくなるなど様々です。
    それらの症状が24時間以内、多くは数分以内に完全に消失するものをいいます。
    放置すると、最初のTIAから、5年以内に大発作が起こる確率は、20~40%と報告されています。
    『家庭のドクター「標準治療」』(日本医療企画発行、「一過性脳虚血発作」工藤千秋 著)より引用

①「介護生活」は前ぶれもなくやってくる!

認知症状は急激に
スタッフ
「お母様が脳梗塞で倒れられました。」

突然、故郷の病院から電話が入った。ゴールデンウィーク明けの5月7日だった。一郎は、取る物も取り敢えず実家のある山口県に向かった。

医師
「幸い命は取り留めましたが、今後は右手足に麻痺が残る可能性が大きいです。会話はトレーニングでどこまで戻るか、やってみないと何とも…」

救急搬送先の病院の医師は、一郎にそう告げた。

一郎
「無理にでも東京によんで、一緒に住めばよかった…」

 一郎は長く会社を休むことができず、翌日の午後の便で東京へ戻った。

急性期病院には長く入院していられない

良子が倒れて3日目、入院先の病院から一郎に電話があった。

スタッフ
「あと10日ほどで別の病院に転院していただきます」

現在、良子が入院している病院は、一定期間集中的な治療をするための病床を持つ急性期病院で、長く入院できないというのだ。
転院の準備のため、一郎は山口行きの飛行機の手配をした。

転院、そして要介護認定

5月21日、良子は転院した。

医師
「2~3カ月かけて自宅に帰ることを目的にリハビリを実施します」

転院先の病院の医師は、一郎に伝えた。 メディカルソーシャルワーカー(MSW)※2からも話があった。

メディカルソーシャルワーカー(MSW)
「介護保険制度の利用のために要介護認定申請※3をしてください」

一郎は地元の役所に行き、要介護認定の申請を済ませた。要介護認定申請をした5日後、認定調査員から一郎に連絡があった。

認定調査員
「認定調査に家族として立ち会ってください。調査は来週の月曜日になります」
  • ※2.メディカルソーシャルワーカー(MSW):社会福祉の立場から患者・家族の様々な相談に応じてくれる専門職です。
  • ※3.要介護認定申請:介護保険のサービスを利用するためには、要介護認定申請をし、要介護度、また要支援の認定を受ける必要があります。 認定調査結果と主治医の意見書をもとに保険者が認定審査会によって結果を判定します。

在宅での介護、はじめの一歩

6月4日。昼前に空港に到着した一郎は、昼食もとらず良子の病院に向かった。
要介護認定調査は1時間ほどで終了した。
その後、メディカルソーシャルワーカー(MSW)から、退院後の助言があった。

メディカルソーシャルワーカー(MSW)
「お母さんが快適に生活できるように家の改修が必要です。ケアマネジャーを探す準備も始めてください」

一郎は、役所からもらったケアマネジャーの一覧表から自宅に一番近い事業所を選び連絡した。そして7月上旬に、ケアマネジャーを含めて今後のことについて話し合いをすることにした。
発症から1ヶ月。良子は病院で手すりにつかまり歩く訓練を繰り返している。
言葉は思うように話せず、いらいらしたり落ち込んだりの日々だ。

住宅のリフォーム・在宅介護のためのケアプラン作り

7月7日、発症から2ヶ月。
自宅に一時帰宅した良子は、元気がなく、積極的に何かをしたい気持ちにはなれない様子※4だが、この日は、一郎も早朝の飛行機で山口に着いて、病院のリハビリスタッフ、新しいケアマネジャーとともに、良子の今後の生活について話し合った。
良子は要介護3と認定された。

一郎は母親が一人でも生活ができるように、風呂、トイレ、洗面所、寝室、廊下、玄関を大幅にリフォームする計画を立てた。総費用は240万円になった。介護保険制度で使える金額は20万円だ。
大きな出費だったが、一郎の貯金からなんとか捻出することができた。

ケアプランは、毎日3回のヘルパー訪問で家事全般の代行、週2回のデイサービスへの通所、ベッドのレンタルという計画を立てた※5。若干、自己負担が発生するが、一人でも不便が無いようにと配慮した。

  • ※4.脳梗塞で脳の中の思考や感情をコントロールする情報伝達物質の流れがさえぎられた場合、うつ状態と同じ症状が引き起こされることがあります。また、日常生活動作の機能の低下などによる気分の落ち込みもあります。
  • ※5.1ヶ月あたりの概算費用38,000円のうち、自己負担額は約14,000円です。 (要介護3、訪問介護、通所介護、福祉用具貸与を利用して一定の条件で計算した場合)

誰にも相談できない疑問や不安

住宅のリフォーム

「リフォームはしたものの、母は不自由な体で、生活できるのだろうか…」
一郎の不安は尽きない。自分の体調も心配である。毎日の仕事と東京・山口の行き来で、この2ヶ月、実質的な休暇を取れていないのだ。
遠地のため旅費もかさむ。家族や会社にも負担をかけている。

相談する相手もなく、募る不安を抱え、一郎は、東京に戻る飛行機のシートにぐったりともたれかかった。






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②重要なケアプラン、間違えば希望を失うこともある

脳梗塞の発症から3ヶ月。予定通り良子は8月の上旬に退院した。一郎はとんぼ返りの予定で東京から駆けつけた。

一郎
「介護保険のサービスを受ければ本当に一人で生活していけるのか、また倒れたときにはどうするのか」

不安を抱えた自宅生活のスタートになった。
良子は発症後、全身の倦怠感に襲われる毎日だ。気持ちもふさいで、どうしても前向きになれなかった。

一郎
「母さん、大丈夫か?」

一郎がたずねても、良子はあいまいな表情をするだけだった。

1日3回(朝、昼、夕)ヘルパーが訪問して家事全般を代行してくれる。
また、デイサービスには、週2回通って、入浴介助、機能訓練を受ける。
良子は、ケアマネジャーが立ててくれたケアプランに沿って毎日を過ごした。
しかし、自宅に戻ったのに家事ができない生活を淋しく感じるようになった。

デイサービスで受ける機能訓練はリハビリの専門職による指導ではなく、集団でレクレーションを行う程度のものであった。
病院のリハビリに比べると楽しい反面、良子はこれで本当に良くなるのかしらと少し不安になった。

わずか2週間で、症状が悪化

8月のお盆休みに帰省した一郎は驚いた。良子が一人でトイレに行くこともままならなくなっているのだ。

一郎
「母さん、どうしたんだ。それにそのあざは?」

転んだのか肘と膝に青あざができている。
ヘルパーに作ってもらった食事はほとんど残し、トイレの回数を減らすために水分も十分に摂っていなかったのだ。
病院では徐々に良くなっていた体が、自宅に戻って2週間で一気に悪化したのだ。
ケアマネジャーは、良子がこんな状態になっていることを把握していなかった。

ケアマネジャー
「施設への入所を検討された方がいいと思います。しかし…、介護保険施設の入所は、待機者数が多くいつ順番がまわってくるか分からない状態ですが」

ケアマネジャーは困惑の表情で話した。

有料老人ホームであればすぐに入所できるが、毎月の利用料を払い続けていくことは、年金生活の良子には不可能だった。
一郎も仕送りをしてやりたいが、大学と高校の子を抱えているため、それも厳しい状況だ。

③ケアマネジャーでリハビリ効果は大きく違う

認知症状は急激に

退院から3ヶ月が経った秋晴れの日、帰省した一郎に付き添われて、良子は久しぶりに通院した。
良子は歩くことができず、一郎に車椅子を押してもらい院内を移動した。
そこでバッタリと入院中同室だった山田さんに出会ったのだ。

山田
「これからもお互いにがんばろうね」

と誓い合った2人だ。
山田さんも退院時は、ようやく一人でつかまり歩きができる状態だった。
良子は山田さんに久しぶりに会えた嬉しさの反面、ショックを受けた。
山田さんは、誰の介助もなく一人で通院し、杖1本で院内を歩いて移動しているのだ。退院するときには2人とも同じようなレベルだったのに。

良子
「なぜ、私だけこんなに悪くなったの?」

大切なケアマネジャー選び

良子と回復度合いが同じレベルだった山田さんは、退院後の3ヶ月間、一体どういうリハビリをし、どんな毎日を送っていたのか。

山田
「介護の経験者から『ケアマネジャー選びが大切』という話を聞いていたの」

山田さんは明るい表情で話し始めた。

山田
「地域の評判を聞いた上で、今後の生活についてしっかりと話ができ、リハビリ職や介護のスタッフと入念な話し合いを持ってくれる人を選んだの」

そのケアマネジャーは、脳梗塞の再発予防に効果的な食事や運動の方法も説明してくれ、山田さん自身もケアマネジャーの提案に納得し、やる気になって、1ヵ月後、3ヵ月後の目標を設定し、毎日を積み重ねていったそうだ。

山田
「今からでも絶対に遅くないから、がんばって!」

山田さんは良子の手をとって勇気づけてくれた。

良子
「私は今日のことだけを考えてくよくよしていたんだ。
山田さんのように、明日のこと、将来のことも考えて、ケアマネジャーと一緒に目標に向かっていくことが大切なのだ。今からでも遅くない」

でも良子には、いったいどこに優秀なケアマネジャーがいるのかわからない。
一郎にもケアマネジャーの重要性がわかった。今回は3日間の休暇がとれた。

一郎
「母親にあったケアマネジャーをさがしてみよう!」

今後にさまざまな不安があるものの、一郎にもわずかな光明がみえてきた。

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④ Point

  • 万が一の介護に備えて、何らかの方法で資金(特に一時金)の準備をしておきましょう。
  • 退院後の早期のリハビリテーションが重要です。
  • ケアマネジャー選びが重要です。地域の評判を確認しましょう。

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